NPO法人の運営

Q : 1 社員が集まることが難しい場合の社員総会の開催方法を教えてください。

社員全員が、一つの場所に集まることが難しい場合の社員が参加できるような社員総会の開催方法として、

①委任状や書面表決の方法による参加
②オンライン会議システムを使用した社員総会の開催
③書面または電磁的記録を用いたみなし決議の利用

が考えられます。

①委任状・書面表決の方法による参加

社員総会に出席しない社員は、書面または代理人によって表決をすることができます(NPO法14条の7第2項)。また、定款に定めがある場合には、メール等の電磁的方法により表決をすることも認められています(NPO法14条の7第3項)。
この方法は、社員総会が開催されていることを前提に、社員総会に参加できない社員が書面等により表決を行う、または議長やその他の社員を代理人として委任することにより参加する方法です。社員総会の日時に予定が入っているなど、開催場所での出席ができない社員は、この方法により社員総会に参加(出席)することができます。

②オンライン会議ツールを用いた開催

社員が集まらなくても、様々な新たなIT・ネットワーク技術を活用することによって実際上の会議と同等の環境が整備され、これに社員が参加したのであれば、社員総会が開催されことが認められます。
具体的には、役員・社員全員が自由に発言できるようにマイクが準備されており、その発言を他の出席者に即時に伝えることができるような情報伝達の双方向性、即時性のある設備・環境が整っていることが必要となります。
※新型コロナウイルス感染拡大に係るNPO法Q&A(内閣府)
https://www.npo-homepage.go.jp/news/coronavirus/coronavirus-qa#qa_01

この方法で社員総会を行う場合には、社員総会の招集通知に、この方法へのアクセス方法など参加するために必要な情報を記載することが必要です。
また、この方法は、社員総会を現実に開催する場合に併用できるだけではなく、①の方法とも併用が可能です。
社員総会を現実に開催せず、①の方法とも併用しないオンライン会議のみの社員総会が法的に許容されるかは株式会社や社団法人等での扱いとの比較上微妙なところですが、NPO については、上記Q&Aにおいて、内閣府がオンライン会議のみによる社員総会を認めていると考えられます。
ただし、上記Q&Aはコロナウイルス感染拡大に関連して出されたものであることを考えると、仮に状況が来期以降改善した場合の手法としては、現実の社員総会とウェブ参加とを組み合わせるハイブリッド型の社員総会が望ましいのではないでしょうか。現実の社員総会は顔を合わせての社員の交流ができますし、ウェブ参加の機会を増やすことは、遠方の社員などの参加機会を広げるからです。
オンライン会議の方法で開催した社員総会議事録には、オンライン会議ツールを用いて開催をしたこと、会議冒頭でオンライン会議ツールの情報伝達の双方向性に問題がないことを確認したこと、オンライン会議ツールを使用して出席した役員・社員の人数を記載することになります。

③みなし決議の利用

社員の全員が、書面やメール等の電磁的記録により、社員総会の目的となる事項の提案に賛成したときには、当該提案を可決した社員総会の決議があったものとみなすこととされています(NPO法14条の9第1項)。この場合、社員全員からの同意が確認できた時に社員総会の決議があったものとみなされます。
この方法は、社員の「全員」から同意がなければならないため、社員の人数が多いNPO法人や全員の協力が得られない可能性がある場合には、この方法によるべきか検討が必要になります。すなわち一人から反対の意思表示があったり、そもそも返事が確認できないような場合には、この方法によることはできません。逆に、社員全員からすぐに協力が得られる場合には、最も簡潔な方法になります。

 

Q : 2 理事が集まることが難しい場合の理事会の開催方法を教えてください。

NPO法には、理事会に関する規定がなく、理事会は、各NPO法人における任意の機関になります。そのため、理事会の運営は、各NPO法人の定款や理事会に関する規定に定めに従って行うことになります。

定款や理事会に関する規定に反しない限り、理事の一部や全員が一堂に会することが難しければ、オンライン会議や電話会議システムを用いて理事が参加する方法が考えられます。オンライン会議を開催する場合の注意点は、社員総会に関するQ&Aをご参照ください。

一方、一般的に理事はその個人的な能力や資質に着目して選任されていると考えられるため、社員総会とは異なり、原則として、他の理事を代理人としたり、書面による表決を行うことはできないと考えられます。同様に十分な討議ができない「持ち回り理事会」も避けたほうが良いでしょう。

Q : 3 オンラインによる社員総会で通信不良が起きた場合にはどのように対応すればよいでしょうか。

これについては、上記Qで記載した社員総会をどのような形で行っているかによって変わってくると考えられます。

オンライン会議のみで会議を行う場合、全員が自由に発言でき、その発言を他の出席者に即時に伝えることができるような情報伝達の双方向性、即時性のある設備・環境が整っていることが前提と考えられますので、そのような環境を欠いた状態での決議はできないものと考えられます。通信不良を解消した上で決議を行うことが求められるでしょう。ただし、通信不良が社員側の通信環境の問題であり、社員総会に参加している議長やその他の社員に通信不良が起きておらず、定足数を上回っている状況であれば、社員総会を続行し決議を行うことができると考えられます。

他方、現実の社員総会(+委任状等)とウェブ参加とを組み合わせるハイブリッド型の社員総会の場合も、現実の社員総会の参加者数が定款上の定足数等決議の条件を満たしている場合や、通信不良が社員側の通信環境の問題であり、現実の社員総会の参加者数とオンラインで通信不良起きていない参加者数が定足数等決議の条件を満たしているのであれば、社員総会を続行し、決議を行うことは法的には問題がないと考えられます。

但し、いずれの場合も、通信不良が生じ意見交換ができなかったウェブ上での参加者に対しては、総会後に総会の結果を伝えると共に、今後の参考にするので意見があれば頂きたい旨個別に連絡を差し上げるのが望ましいでしょう。

また、オンライン会議を実施する招集通知に、オンライン会議に参加する場合には十分な通信環境が整っている場所でご参加いただくこと、通信不良や通信障害が発生した場合の不利益の責任を負いかねることをあらかじめ明記しておくと良いでしょう。

Q : 4 社員総会の議事録はいつ、どのように作成すればよいでしょうか。

NPO法では、定款の変更や合併を行う場合に、社員総会の議事録の謄本を所轄庁などに提出しなければならないとしていますが、それ以外に特段の規定をしていません(もっとも役員の変更など登記申請を行う場合には、添付資料として社員総会の議事録が必要になることがあります。)。しかしながら、NPO法人のガバナンス上、社員総会で議論して意思決定したことを記録する議事録は常に作成して保存しておくべきでしょう。

議事録の記載事項について、NPO法には特段の規定はありませんが、社団法人は社員総会議事録として記載しなければならない事項が定められておりますので(一般法人法57条1項、一般法人法規則11条3項)、これにならって最低限以下の事項は記載して置くのが望ましいでしょう。

① 社員総会が開催された日時及び場所

(当該場所で出席していない理事、監事又は社員が社員総会に出席した場合には出席方法(例:オンライン会議システム)を記載する)

(開催場所を記載する場合には、その具体的な記載方法について、ある程度特定可能な形、例えば「議長自宅」などの記載で差し支えないものと思われます。)

② 社員総会の議事の経過の要領及び結果

③ 社員総会に出席した理事、監事または社員の氏名又は名称

④ 社員総会の議長が存するときは、議長の氏名

⑤ 議事録の作成に係る職務を行った者の氏名

また、オンライン会議ツールを併用した場合には、オンライン会議ツールを用いたことと、会議冒頭でオンライン会議ツールの情報伝達の双方向性に問題がないことを確認したことを記載し、オンライン会議ツールを使用して出席した役員・社員の人数を記載しておくべきでしょう。

Q : 5 NPO法人の社員総会の招集通知をEmailで送付することはできますか。

NPO法では、社員総会の招集通知の送付方法について特段の規定はありませんので、定款の定めに従うことになります。定款で、招集通知を「電磁的方法」又はEmailにより通知するといった規定があれば、メールで送付することが可能です。

それでは、定款には「電磁的方法」又はEmailによるという文言がない(単に書面で通知するという文言になっている)場合はメールで送付できないのでしょうか。招集通知をEmailで送付する場合、その招集通知が社員のもとに届かなかった、または社員が招集通知を受領していることに気付かなかった、という事態が発生しないように気を付けなければなりません。そのため、事前の連絡を行わずに、Emailで送付することは避けるべきでしょう。

NPO法人が招集通知を社員に対してEmailで送付したい場合、一般法人法の規定にならい、社員に対して招集通知をEmailで送付する旨を打診し、事前に書面又は電磁的方法(Emailを含みます)で承諾を得てから行うのが望ましいと考えられます(一般法人法39条3項、一般法人法施行令1条1号)。

Q : 6 コロナウイルス感染症のために、2020年6月中にNPO法人の通常社員総会を開くことが難しいと考えています。どのような対応をとればよろしいでしょうか。

NPO法人は、少なくとも毎年1回、通常社員総会を開催しなければなりません(NPO法14条の2)。したがって、本年度に限り社員総会を開催しないという選択はできません。

いつも行っている時期に通常総会を開催することが困難であれば、延期を考えることになるでしょう。NPO法では、通常総会の時期について特段の定めは有りません。定款で所定の時期に通常総会を開催するという定めがあったとしても、天災等その他の事情によりその時期に通常総会を開催できない場合には、当該状況が解消された後合理的な期間内に通常総会を開催すれば問題とはならないと考えられています。

もっとも、定款の定めに従った通常総会の開催が望ましいことは言うまでもありません。そこでまずは、社員が集まって行う社員総会以外の開催方法によって開催することができないか検討することをお勧めいたします。開催方法については、「NPO法人の運営」のQ&Aをご参照ください。そのような方法でも開催が困難であれば、通常総会の延期をご検討ください。

Q : 7 コロナウイルス感染症拡大防止対策により、事務所で毎日勤務できないことから、NPO法で定められている事業報告書等の提出を期限内までにできそうにありません。どうしたらいいでしょうか。

NPO法人は、毎事業年度初めの3か月以内に、事業報告書等を作成しなければならず(NPO法28条)、これを毎事業年度1回所轄庁に提出しなければならないものとされています(NPO法29条)。

コロナウイルス感染症の拡大により、事業報告書等の提出が遅れる場合の対応について内閣府がQ&Aで回答をしています(参照URL:https://www.npo-homepage.go.jp/news/coronavirus/coronavirus-qa#qa_02)。

ここではコロナウイルス感染症の拡大は天災の影響などのやむを得ない状況に相当するとされていますが、各NPO法人による提出の遅れがやむを得ないかどうかは、結局のところ個別具体的な事情で判断されることになると思われます。したがって、事業報告書等の提出遅延がやむを得ないものかを確認していただき、どうしても遅延することが見込まれる場合には、所轄庁に事前に相談するようにしましょう。

上記内閣府Q&Aでは、提出期限が2020年7月1日以降である場合、事業報告書等の取扱いは、今後の情勢を踏まえ必要に応じ検討することとされており、コロナウイルス感染症拡大を理由とする提出の遅延が認められない可能性があることにご注意ください。

なお、東京都では、2020年4月22日に公布された条例(「東京都における新型コロナウイルス感染症のまん延を受けた者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する条例」)により、2020年4月7日から同年7月30日までの間に条例が規定する期限が到来する提出書類であっても、これを同年7月31日までに提出すれば、期限までに履行されなかったことについて行政上及び刑事上の責任は問われないとしており、事実上提出期限が2020年7月31日まで延長されています(参照URL:https://www.seikatubunka.metro.tokyo.lg.jp/houjin/npo_houjin/notice/0000001443.html)。各地で、異なる取扱いがされていますので、遅延が見込まれる場合には、ぜひ所轄庁に早めに相談するようにしてください。

資金調達

Q : 1 コロナの環境下において、NPO法人が正会員の会費の額を変更しても良いでしょうか。その手続についても教えてください。

新型コロナウイルスによる影響で収入が減るなどしたNPO法人が、それを補填するために正会員の会費の額を増額変更する場合を例に考えてみます。

正会員の会費の額は、特定非営利活動促進法上、直接的に規制する規定はありませんので、NPO法人が自由に定めることができるのが原則です。会費の増額以外の手段(募金、資産売却、借入れなど)で資金を獲得できる場合でも、そのことを理由として会費の増額が妨げられることはありません。

但し、正会員の会費はNPO法人の社員としての地位に関りますので、特定非営利活動促進法2条2項1号イに定める「社員の資格の得喪に関して、不当な条件を付さないこと」の要件との関係では注意が必要です。

どういう場合に「不当な条件」を付したことになるのかについて、統一的な解釈基準はありませんので、法人の目的等に応じてケースバイケースで検討せざるを得ませんが、例えば、改定後の会費が正会員に認められる権利(社員総会における表決権その他法人運営に参加する権利、当該法人のサービスを会員価格で利用できる権利など)と比較して不相当に高額となる場合や従前の会費の額の数十倍といった極端な増額を行う場合には、既存の正会員の会員資格維持を困難にしたり、新規入会希望者の入会を妨げる効果を生じることがありますので、その程度が著しいと「不当な条件」を付したものと解釈される可能性があります。

また、あまり想定はできませんが、会費の増額によって法人の目的達成や事業運営に支障を生じるケースでは、会費を増額すること自体が定款に違反し、無効とされる可能性や、役員の善管注意義務違反の責任を問われる可能性もゼロではありません。

法人の存続のために会費を増額せざるを得ない場合であっても、その額は法人の事情に応じた合理的な範囲に留めるべきです。

 

次に、会費増額の手続について解説します。

正会員の会費の額を定款で定めている法人の場合、会費の増額のための定款変更の手続が必要です(法11条1項5号)。そのため、理事の会議または理事会(理事会設置法人の場合)で会費の増額について議論し、増額を是とする場合には、定款変更を目的とする社員総会を招集し、承認を得なければなりません。その議決は、定款に特別な定めがない限り、社員総数の2分の1以上が出席し、その出席者の4分の3以上の多数をもってされることが必要です(法25条1項、2項)。社員総会終了後には、所轄庁に定款変更の認証申請を遅滞なく行ってください(法12条1項2号、同25条3項)。なお、新型コロナウイルスの影響により、機動的な会議の開催が難しい場合の代替手段については、【covid-19関連】Q&A「NPO法人の運営」の解説をご参照ください。

 

以上に対して、正会員の会費の額を会員規程等で定めている法人の場合、会員規程を改定するだけで会費の増額が可能です。規程の改定の手続は、定款または規程自体で定めがあるのが一般的で、多くの場合は理事会決議や理事の過半数による決定によるものとされています。なかには理事長の判断としている場合もあるかもしれません。いずれの場合でも、それぞれの法人が定める方法で改定することが可能です。

なお、正会員の会費の額を会員規程等で定めている法人の場合には、法人の役員を務めている会員を除いて、改定の是非を判断する機会のないまま会費の増額が決定されてしまうことになります。上述のとおり、会費の増額は社員の資格の得喪にも影響しますので、会費増額の必要性に照らして増額の程度が過度に大きく、既存の正会員の会員資格の維持を困難にし、新規入会を妨げるといった負の効果が著しい場合には、役員の善管注意義務違反の責任が問われる可能性がありますので、注意が必要です。会費の増額変更によって会員に追加の負担を求める法人の役員は、後日のトラブルを避けるためにも、会員に対して丁寧な説明が望まれます。

Q : 2 NPO法人が新型コロナウイルス対策やそれに対する支援を謳って資金調達をする際に気をつけなければならないことは何でしょうか。

新型コロナウイルス対策として、法人の提供する商品の購入やサービスの利用を呼び掛ける場合は、虚偽・誇大表示規制(薬機法、健康増進法)や不当表示規制(景品表示法)に該当しないように留意する必要があります。いずれも罰則を伴う重大な違法行為です。

 

(薬機法における虚偽・誇大規制)

医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品(「医薬品等」)は、疾病に対する治療や美容の効果が認められる反面、その使用に当たっては高い安全性が求められることから、薬機法(旧薬事法。正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)では、厳格な広告規制が定められています。

・第66条 医薬品等の誇大広告等の禁止

医薬品等の効用・効果・製造方法等について、当該医薬品等について国が認証した内容と異なる内容の記事や誇張した内容の記事を広告し、または表示するなどの行為が禁止されています。

・第67条 がんその他の特定疾病用医薬品の広告の制限

その使用に当たり高度な専門性が要求されるがん、肉腫及び白血病の医薬品の医薬関係者以外の一般人を対象とする広告が制限されています。

・第68条 承認前の医薬品等の広告の禁止

医薬品等として承認されていないにもかかわらず、医薬品等であるかのような効用・効果等をうたって広告等を行うことが禁止されています。

上記規制のうち、第66条と第68条の禁止規定は、「何人も」これらの規定に違反する広告等を行ってはならない旨を定めています。NPO法人がよかれと考えて、新型コロナウイルスに効果があるとされている商品などをウェブサイトやSNS、メール等で紹介するだけでも、表示や記載の内容によっては、規制に抵触する場合があります。違反に対しては、懲役や罰金といった罰則の定めがありますので、十分に注意してください。薬機法の広告・表示規制について、より詳しい規制内容を知りたい方は、下記リンク先を参照ください。

  • 厚生労働省ウェブサイト「医薬品等の広告規制について」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukokukisei/index.html

 

(健康増進法における虚偽・誇大表示規制)

食品として販売される物の広告についても規制があります。健康増進法は、健康の保持増進の効果等が実証されていないにもかかわらず、その効果等を期待させるような虚偽誇大表示を行うことを規制しています。

・第65条1項 誇大表示の禁止

食品として販売される物(薬機法上の医薬品を除く一切の飲食物)に対して、健康状態の改善または健康状態の維持の効果があるかのような著しく事実に相違する表示、または著しく人を誤認させるような表示をすることが禁止されています。

具体的には、疾病の治療または予防を目的とする効果があるかのような表現、身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効果があるかのような表現、特定の保健の用途に適する旨の表現、人の身体を美化し、魅力を増し、容ぼうを変え、皮膚や毛髪を健やかに保つ効果があるかのような表現等を用いることが規制されています。

この規定においても、販売事業者やメーカーだけでなく「何人も」を規制の対象としているため、NPO法人が食品の販売行為に関わっていない場合でも、ウェブサイト等での紹介の仕方によっては同法に違反する場合がありますので、気をつけましょう。

なお、同法にも罰則の定めがあります。

健康増進法における誇大表示規制について、より詳しい情報が必要とする方は、下記のリンク先ご参照ください。

  • 消費者庁ウェブサイト「健康増進法(誇大広告の禁止)」

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/

 

(景表法における不当表示規制)

商品・サービスの内容、または取引条件について、実際よりも著しく優良または有利であると誤認させる表示を不当表示として禁止しています。

・第5条1号 優良誤認表示の禁止

品質、規格その他の商品・サービスの内容について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示、または事実に相違して競争業者のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示が禁止されます。

・第5条2号 有利誤認表示の禁止

価格その他の商品・サービスの取引条件について、実際のもの、または競争業者のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示が禁止されます。

これらの規制は、薬機法、健康増進法と異なり、自らの商品・サービスの取引について上記のような不当表示を行う事業者のみが対象とされています。自己の商品・サービスについて、ウェブサイトや広告、パッケージなどに消費者を誤認されるおそれのある表示をすることで、NPO法人も行政による監督や処罰の対象になりますので、十分にご注意ください。

景表法における不当表示規制についてさらに詳しくお知りになりたい方は、下記のリンク先をお調べください。

  • 消費者庁ウェブサイト「表示規制の概要」

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/

Q : 3 新型コロナウイルスの影響下で募金活動を行う場合に気を付けるべきことは何でしょうか。

募金活動の主催者たる法人は、法人のスタッフやボランティアなど募金活動に携わる者の生命、身体を危険にさらさないように留意するべき法的責任を負っていると考えられます。

特に、不特定多数の方との接触を伴う街頭募金は、その態様によっては、新型コロナウイルスを含む感染症の拡大に荷担する可能性がありますので、三密(密閉、密集、密接)を避ける、適度な距離を取る、マスクを着用する、消毒を徹底する、発熱など体調に不安がある場合には参加しない(させない)といった感染拡大防止のための基本的な行動ルールを順守することはもちろんのこと、当日の気象条件等を勘案し、リスクの程度に応じた適切な感染防止対策を講じるようにしてください。

万一、これらの対策を怠ったまま募金活動を行い、参加者や通行人の生命や身体を危険にさらした場合には、不法行為や使用者としての安全配慮義務違反を理由に、損害賠償請求を受ける可能性があります(事業活動のQ1参照)。

通行人の注意喚起のために大きな声を発する、未成年者や学生を募金活動に参加させる、募金活動のために長距離を移動するといった、平常時であれば何ら問題のない募金活動でも、非常時においては批判や妨害にさらされる危険があります。

募金活動を再開するに当たっては、感染対策と安全確保に万全を期し、実施マニュアルの改定、適切な研修の実施、感染を起こしにくい日時・場所の選択、参加者の体調管理、感染者が出た場合の対応確認などの事前の対策を十分に行うようにしてください。参加者やその家族に感染者が出てしまった場合に、行政による濃厚接触者の調査に協力できるように、募金活動の参加者や日時場所等を記録に残しておくことも重要です。

事業活動

Q : 1 もし、NPO法人が実施した活動で集団感染が起きてしまった場合、NPO法人は、損害賠償しなければならないのでしょうか。また、損害賠償の責任を負わないようにするためには、どのような点に気を付ければいいでしょうか。

NPO法人は、イベント等の活動を実施する場合、参加者の安全に配慮して活動を行う義務(安全配慮義務)を負っていると考えられています。集団感染が発生し、NPO法人が、この安全配慮義務に違反していれば、損害賠償をしなければなりません。

安全配慮義務に違反したかどうかは、集団感染の可能性がどの程度具体的に予想できたか、感染を避けるための措置をどの程度行っていたかなど、それぞれの事案の個別具体的な事情を総合的に考慮して判断されます。

例えばコロナウイルス感染症が蔓延している状況、特に緊急事態宣言発令中に行われた活動や、感染を避けるための措置を十分にとらないまま行われた活動等により集団感染が発生すれば、安全配慮義務を怠ったと判断される可能性は高くなるでしょう。

そのため、活動の性質や規模、開催場所、コロナウイルス感染症の状況を踏まえて、開催が適切かどうかを判断し、開催する場合には、①参加者に対して手洗い・マスク着用の徹底、②アルコール消毒液の準備、③参加者間の間隔をとるための措置、④(屋内であれば)換気の徹底など、できるかぎりの対策をとるべきです。

また、参加申込書に、風邪の症状がある場合、主催者として参加を拒否することを明記し、活動の性質によっては、参加者が感染のリスクがあることを了承する旨の誓約をとっておくことも考えられます。誓約をとれば安全配慮義務を免れるというわけではありませんが、参加者側も感染のリスクを承知の上で参加した場合、参加者側の過失が認められ、損害額が減額される可能性があるため有用と思われます。

ただし、集団感染が発生した場合には、参加者からの損害賠償請求のリスクだけではなく、NPO法人のレピュテーションにも影響がありますので、活動の実施とその方法について、問題が発生する可能性とそのリスクを事前によく検討するようにしましょう。

Q : 2 感染者が多い地域に住んでいる方のイベント参加を断ることができるのでしょうか。その場合に注意すべき点があれば教えてください。

イベントを行うNPOの側にも、イベント参加者に対する安全に配慮する義務がありますので、新型コロナウイルス等の感染症に感染している可能性が高い方の参加をお断りすることは、他の参加者との関係では本来必要なことであると思われます。また、イベントに参加できる方を限定することは合理的な理由があればそれが違法となることはまずありません。ただ、一定の属性を持った方の参加を一律に制限するようなことをする場合には、NPOの評判を低下させるリスク(レピュテーションリスク)があります。その点で、社会の状況に応じた慎重な対応が求められますし、申込制にして事前に体調を尋ねる等の方法により感染の可能性のある方の参加を極力排除できるのであればそのような方法のほうが望ましいと考えられます。

もし一定地域からの参加をお断りするのであれば、告知の際になるべくわかりやすい形でそれを周知すべきかと思います。例えば「新型コロナウイルスまん延対策のため、今回は●●居住の方のみの参加とさせて頂き、●●外の方はご参加頂けない形での開催となります。大変申し訳ございませんが、ご理解ご協力のほどよろしくお願い致します。なお、イベント開催にあたり、殺菌消毒等の感染症対策は徹底して行う予定です。」といった一文を入れておくのも一つの方法かと思います。

また、仮に感染者が出た場合、自治体等からの濃厚接触者への協力の一環として、参加者名簿を提出する可能性がありますので、あらかじめ参加者には了解を得ておくのが望ましいでしょう。

Q : 3 オンライン会議システムを利用してセミナーやイベントを開催する予定ですが、どのような点に気を付ければいいでしょうか。また、どのような手続を行う必要がありますか。

(1)    権利者からの許諾が必要

Zoomなどのオンライン会議システムを用いたセミナー(Webinar)やイベントを企画する場合、映像の配信方法として、①ライブ配信、②録画配信が考えられ、視聴方法としても、①現場の会場とオンライン配信の併用、②オンライン配信のみというやり方が考えられます。また、後日にアーカイブ配信(例えば、参加者特典として後日オンデマンド配信したり、別の企画に転用したりするなど)をする企画もあるでしょう。

こういったオンライン・セミナーやイベントを著作権法上問題なく行うためには、後述する「引用」や「写り込み」といった権利制限規定の適用がない限り、配信される映像に関わる全ての著作物について、著作権者からの許諾を得る必要があります。また、後述するように、映像に写り込んでいる人物からの許諾も必要になる場合があります。

講義形式のセミナーだけではなく、講師以外の人物が写り込むイベント映像を配信することもあると思いますが、特にこういった映像は、映像そのもの、映像に挿入する音楽(BGM)、映像を構成するシナリオ、映像に写っている発言や展示物などの著作物といった著作物の集合体であり、それぞれの著作物について著作権があるので、注意が必要です。

以下具体的に見ていきます。

(2)   セミナー講師の著作権

セミナーで話された内容(講演)は、原則として、講師の著作物です。講演は、通常「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)ですので、「言語の著作物」(著作権法10条1項1号)として、セミナーを行った講師が著作権を有します。

セミナーのオンライン配信は、不特定又は多数の人々にインターネット等を通じて送信する行為ですから、ライブ配信の場合、自動公衆送信・送信可能化という著作物の利用行為にあたります。また、録画配信の場合、自動公衆送信・送信可能化、複製という行為にあたります。著作権者は、著作権の支分権としてこれらの行為を行う権利がありますので、セミナー映像をオンライン配信するには、講師から許諾を得る必要があります。講演の内容の文字起こしを配信したりする行為も、同様に講師の許諾が必要です。

講師から許諾を得るには、契約書を締結する方法のほか、講師依頼書に著作物の使用許諾の文言を入れて返送してもらう方法も考えられます。契約書を締結する場合、ベースとなるひな形としては、文化庁の「著作権契約書作成支援システム」を活用できるでしょう(https://pf.bunka.go.jp/chosaku/chosakuken/c-system/index.asp)。

 

(3)   主催者の権利

他方、イベントを企画した主催者は、セミナー映像の著作者とならないのでしょうか。

まずは、一般論を整理しましょう。

一般に、映像については、媒体に固定されていれば「映画の著作物」にあたりますが(著作権法2条3項、10条1項7号)、映画著作物の著作者は、プロデューサー、監督・ディレクター、撮影監督、美術監督など「制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」(モダン・オーサー)であるとされています(著作権法16条)。

ただし、映画著作物の著作者が、実際の映像を製作したビデオ制作会社などの「映画製作者」(映画著作物の製作に発意と責任を有する者。著作権法2条1項10号)に対し、その映画著作物の製作に参加することを約束しているときは、映画著作物の著作権は、この映画製作者に帰属します(著作権法29条1項)。

また、法人がその職員や従業員にその職務として映像を製作させた場合、社内規則や契約などで職務著作に関する取り決めがない限り、法人が著作者となります(職務著作。著作権法15条)。

したがって、①映像そのものの著作者は、映像の製作者となるのが通例です。イベント主催者が映像製作をビデオ制作会社などに外注する場合、通常、著作者はビデオ制作会社となります。

他方、②シナリオや音楽などの映像の構成要素は、映画著作物とは別個の著作物とされますので、それらの著作者(クラシカル・オーサー)は、自己の著作物の著作権を有します。

加えて、③ナレーターや出演者には、実演を録画することやインターネットでライブ配信することの権利があります。これを、実演家の権利といい著作隣接権の1つです(録音権・録画権(著作権法91条1項)、送信可能化権(著作権法92条の2第1項)など)。ただし、いったん録画された映像の実演には、放送番組の場合でない限り、実演家の権利は働きません。

映像に関わる権利の一般論は、概ね以上のとおりなのですが、これを踏まえて、イベント主催者がどのような権利を有するか、考えてみましょう。

まず、主催者は、自前で映像を製作すれば、その著作者となり得ます。しかし、外注の場合の著作権は、上述のとおり、通常、ビデオ制作会社に帰属します。そのため、主催者がその映像を利用するためには、外注先から著作権を譲り受けるか、使用許諾(ライセンス)を受けるかのいずれかの処理が必要となります。

音楽等の第三者の著作権の権利処理は、制作会社が行うのが通常です。主催者が自前で映像を製作する場合、音楽著作権に関する権利処理は、JASRACやNexToneなどの管理事業者、市販のCD等の音源の複製利用・送信可能化利用にあたっての著作隣接権(原盤権)の権利処理については、レコード会社・レーベル(あるいはレコード協会等)に対して行いますが、配信方法によっては許諾が不要な場合もありますので、問い合わせてみましょう。

なお、Zoomなどのオンライン会議サービスのプラットフォームも、映像を製作したわけではなく、創作的に寄与したのでもないので、映像の著作者とはならないと考えられます。ただし、プラットフォームを利用する場合、利用規約において、権利者がプラットフォーム側に対して一定の権利を付与することとされている可能性がありますので、利用する際には事前に利用規約を確認しましょう。

いずれにせよ、イベント主催者としては、著作権の所在に関わらず、オンライン・セミナーの参加者に「セミナーの内容やセミナー映像にはそれぞれ著作権などの権利があるので、無断転用はやめてください」と注意喚起しておくべきでしょう。

(4)   肖像権

映像に写り込んでいる人物には、肖像権があります。したがって、オンライン・セミナーやイベントの開催に当たっては、肖像権を侵害しないようにしなければなりません。

肖像権の侵害かどうかの判断にあたっては、被写体を判別できるかどうか、また、被写体の社会的地位、活動内容、撮影の場所、目的、態様、必要性等を総合的に見て、受忍限度を超えるかどうかで判断されます(最判平成17年11月10日参照)。

Zoomなどで顔出し発言をしている場合などは、発言者は、ライブ配信は良くてもその映像がオンデマンド配信によって公開されることは容認していないなどということもあり得るでしょうし、上記の判断はケースバイケースであり、判断に微妙な場合もあるので、写り込んでいる人物が判別できない場合でない限り、映像を配信・公開するためには、映像にはっきり写り込むこととなる人物から許諾を得るべきです。イベント参加の条件として、配信・公開の方法、範囲、目的等を明示した上で、参加者から事前に包括的な許諾を得ておくことは、有効と考えられます。

(5)   施設管理権

施設の中に入って撮影する場合など、撮影場所によっては、施設管理権を有する管理者や所有者として施設や物を支配・管理する者に撮影を申し込み、許諾を得る必要もあります。

Q : 4 権利者からの許諾を得る必要がない場合はありますか。その場合、どんなことに注意すればよいか教えてください。

(1)   引用

セミナーで他人の著作物を利用することがあります。利用形態としては、複製、スクリーンへの投影(上映)、インターネット配信(公衆送信・送信可能化)などがあり得ますが、これらの利用にあたって、セミナーの講師は、著作権者から許諾を得る必要があります。

ただし、引用という形であれば、無許諾で利用することができます(著作権法32条)。これは、著作権法における例外規定(権利制限規定)です。「引用」といえるためには、「引用の目的上正当な範囲内」で行われる必要があり、その判断基準は法律で定まっていないものの、概ね、以下の条件を満たしていなければならないとされます。すなわち、公表されている著作物であること、公正な慣行に合致すること、報道、批評、研究などのための正当な範囲内であること、引用部分とそれ以外の部分の主従関係が明確であること、カギ括弧などにより引用部分が明確になっていること、引用を行う必然性があることが必要であり(最判昭和55年3月28日参照)、複製して引用する場合は、出所の明示も必要です(著作権法48条1項1号)。

(2)   写り込み

また、撮影にあたって撮影対象から分離することが困難な、いわゆる「写り込み」の対象となる他の著作物(付随対象著作物)は、その録画に伴って複製等の利用ができます(著作権法30条の2)。これも権利制限規定の1つです。

(3)   オンライン授業について(参考)

非営利の学校その他の教育機関で、授業に使うことを目的とする場合、教育を担任する者や授業を受ける者は、必要と認められる限度で、著作物を複製、公衆送信(送信可能化)、公衆伝達することが認められています。ただし、著作物の種類や用途、複製の部数や態様に照らして著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、認められません(著作権法35条1項)。

これにより、学校の授業などにおいては、授業の過程で必要な限度であれば、他人の著作物を自由に複製することができるだけでなく、オンライン配信も無許諾で可能です。

ただし、対面授業と同時に行わないオンライン配信のみの場合や、録画映像のアーカイブ配信の場合については、教育機関を設置する者が補償金を支払う必要があります(著作権法35条2項。対面授業と同時に行うオンライン配信(遠隔合同授業)は、補償金不要です)。平成30年著作権法改正によって、このような遠隔授業が可能となりました。ただし、2020年度に限り、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」(令和2年4月20日閣議決定)に基づき、補償金の支払いが免除されます。

とまで申し上げたところで、この規定の対象施設は、学校その他の教育機関(営利を目的としないもの)に限られますので、NPO法人が主催するイベントには適用がないことが多いでしょう。

Q : 5 オンラインのセミナーやイベントを非営利で行う場合であれば、権利者からの許諾は不要でしょうか。

非営利の上映などの場合、権利者の許諾がなくても可能という著作権法の例外(権利制限規定)があります。すなわち、非営利・無償(かつ実演家等に対して無報酬)であれば、著作物を自由に上演、演奏、上映及び口述することができます(著作権法38条)。そこで、非営利のセミナーの現場で、図表等の上映(スクリーンへの投影)を行うことは、著作権法38条の規定によって無許諾でも適法となります。

しかし、この規定は、著作物をインターネットで送信する場合には適用されません。著作物をインターネットで送信する場合には、著作物がサーバーに複製され、インターネットを通じて公衆送信されますが、複製や公衆送信にはこの規定の適用がないからです。したがって、非営利であっても、オンライン・セミナーやイベントの場合は、依然として、権利者からの許諾が必要ということになります。

Q : 【Q6~9の設問の事例】
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、主催者として開催を予定していたイベントの中止を決定しました。会場は一定の制限のもとに使用が可能でしたが、参加者やスタッフの安全や感染拡大防止の観点から中止を決めたという場合、主催者であるNPO法人は、会場や参加予定者、協賛企業との関係でどのような対応が必要になるでしょうか。以下の質問から考えてみましょう。
Q : 6 設問の事例において、主催者であるNPO法人は、すでに集めていた参加費を返還しなければならないでしょうか。

イベントを中止したときの参加費の返金の取り扱いについては、主催者がキャンセルポリシーなどで返金ルールを定めることが多くなっています。主催者判断によるイベント中止の場合に参加費を返金しないというルールを定めていれば、基本的にはそのルールのとおり返金の必要はありません。

しかし、個人の参加者を対象とするイベントの場合、参加者は消費者契約法という法律によって消費者としての権利が守られています。具体的には、返金等のルールを定めた規定が不合理で消費者に一方的に不利なものである場合、同法ではそれを「不当条項」と呼び、その効力を否定しています。万一、イベントの返金ルールがこの不当条項に該当する場合、そのルールは個人の参加者との関係では無効になるため、主催者は参加費を返還しなければなりません。

どのような場合に、返金のルールが不当条項として効力を否定されるのかは、その内容や消費者に与える不利益の程度等によって判断されますが、過去の裁判例では、利用者の都合によるホテルや結婚式場のキャンセル料を定める約款の効力が争われ、キャンセルによってホテルや式場が被るであろう平均的損害を超える額のキャンセル料の請求は許されないとの規範が示されたケースがあります。 イベントの返金ルールを定める際には、このような裁判例も考慮に入れて、不可効力による中止の場合と、主催者の裁量に基づく中止の場合、さらには主催者の故意過失に基づく中止の場合とで、返金の有無や返金割合に差を設けるなどして、参加者の権利を不当に侵害しないようなルール設計を心掛けるべきです。なお、改正民法によって、令和2年4月1日以降は、いわゆる定型約款について不当条項は契約から排除されることになりました。イベントの返金ルールを定型取引約款で定めた場合、ルール次第では契約の内容とはならない場合がありますので、注意が必要です。

主催者が返金のルールを定めていない場合、参加費はイベントに参加する見返りとして支払うものなので、主催者の都合で中止したときは、参加者全員に全額返金しなければなりません。返金を請求する権利は行使できるときから5年経つと時効にかかり消滅しますが、主催者が5年間もの長期にわたって返金対応に応じ続けることは現実的ではありません。そこで、返金に対応する期間を合理的な期間に制限することは許されるでしょう。なお、peatixなどのイベント決済サービスでは返金についてのルールが定められており、主催者も従う必要があります。返金について手数料が発生する場合があることにも注意が必要です

なお、イベントが文化芸術またはスポーツに関するイベントについては、参加者が参加費の返金を辞退することで主催者を支援する制度が令和2年4月30日に作られました。

https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/sonota_oshirase/pdf/202005011800_01.pdf

参加者は、その制度を使って返金を辞退した場合、寄附したこととなり、主催者が税額控除寄附の対象となっていない法人であっても税優遇を受けられるというメリットがあります。

イベントが文化芸術またはスポーツに関するもので、令和2年2月1日から令和3年1月31日までに開催されたまたは開催する予定であったのであれば制度を利用することができるイベントとして文部科学大臣より指定される余地があります。詳細は、文化庁のウェブサイトをご参照ください。

https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/sonota_oshirase/covid19_info/donate.html

Q : 7 設問の事例の場合に、協賛企業から受領していた協賛金については返還しなければなりませんか。

主催者が協賛の条件として主催者判断によるイベントの中止の場合も協賛金を返金しない旨を定めていれば、設問の事例でも協賛金を返金する義務はありません。事業者との合意ですので、消費者契約法の適用はなく、協賛企業にとって不利益となる条項であったとしても直ちに無効になることはありません(公序良俗に反するような極端な内容のものを除きます。)。

これに対して、返金のルールを定めていない場合には原則として返金しなければなりませんが、イベントの準備のために経費を支出しており、中止しても全額の返金が難しい場合もあるでしょう。そのような場合には、協賛企業から了解を得て、中止ではなく延期にする、あるいはオンラインでの開催に変更するといった対処をすることで協賛を維持してもらうといった対応が考えられます。延期やオンラインでの開催への変更が難しい場合には、協賛企業のプロモーションの実施の有無などを考慮して返金する金額について協議することになるでしょう。

イベントの協賛金を受け取る場合には、返金を巡ってトラブルが起きないように中止の場合の取り扱いをあらかじめ合意しておくべきです。たとえば、不可抗力の場合や、不可抗力ではなくとも参加者の安全のために自主的に中止を判断した場合等を想定して、それぞれの場合に返金するかどうかを明示するとよいでしょう。

Q : 8 設問の事例において、中止を決定したイベントが、主催者のNPO法人が実施したクラウドファンディングの返礼企画のひとつであったという場合に、主催者としては中止にあたってどのような対応が必要になりますか。

クラウドファンディングにおける返礼として、イベントへの招待の約束をしていた場合、中止によってその約束が果たせないことになります。その場合、支援者とクラウドファンディングのプラットフォームのそれぞれに対して対応を考えねばなりません。

 まず、支援者との関係では、受領済みの支援金を返金すべきかどうかが問題になります。イベントへの招待を寄付や購入の条件とした場合は、それが果たせない以上、原則として支援金を返還しなければなりません。そのため、支援金を受け取りたいのであれば、イベントへの招待と同等の価値を有する他の返礼品や代替イベントの開催などを提案して、支援を維持してもらう努力が必要になります。

これに対して、イベントが複数ある返礼のひとつに過ぎず、支援金とイベント招待との間に明確な対価関係がない場合は、必ずしも支援金を返す必要はありません。ただし、支援者の期待を裏切る行為には違いありませんので、丁寧な説明とともに、可能であれば代替提案を行うことが望ましいでしょう。

 次にプラットフォームとの関係では、イベントの契約や利用規約に違反しないよう注意が必要です。新型コロナウイルスが原因とは言え、契約や利用規約に従った対応をしない場合、ペナルティを課せられる可能性があります。イベント中止を検討する際には、それが支援に対する返礼としてどのような意味を持つのかを整理したうえで、プラットフォームの担当者に早めに相談して、対応を協議するのが望ましいでしょう。

Q : 9 設問の事例において、主催者であるNPO法人がイベントの中止の決定を会場に伝えたところ、会場からキャンセル料の請求を受けた場合に、支払う義務はあるでしょうか。

設問の事例のように、会場の使用が可能なのであれば、自己都合による中止ということになるので、会場のキャンセルポリシーに従って使用料の一定割合をキャンセル料として支払わなければならないというのが原則です。

しかし、新型コロナウイルスとそれに対する政府の対応は事前に想定することが困難であり、平常時における自己都合によるキャンセルとは性質が異なります。そのため、話し合いによって妥当なキャンセル料を決めるということもあってもよいでしょう。

また、会場が新型コロナウイルス対策として、収容可能人数を減らしたり、飲食を禁止したりする等、一定の使用制限を課すことがあります。このような場合には、イベントが開催できたとしても、収支が合わなくなったり、イベント自体が成り立たなくなることもあるでしょう。そのような場合には、不可抗力でなくても、主催者に責任がないので、不可抗力に準じてキャンセル料の負担なしでの解約が認められるべきと考えます。

以上のようなことを踏まえて会場としっかり話し合い、お互いが納得できる解決策を考えるべきです。

契約不履行

Q : 【Q1~3の設問事例】
新型コロナウイルスの感染拡大やそれを受けた政府・地方自治体の自粛要請等の影響により、行政や企業などから委託を受けて実施を予定していた事業が契約で決められたとおりに実施できなくなった場合に、受託者であるNPO法人は、委託者との関係でどのように対処すればよいのか、以下の質問から考えてみたいと思います。
(想定されるケース)
海外渡航が制限されたため、現地調査や国際会議への参加ができなくなった
学校や保育所の閉鎖の影響で、必要なスタッフ数が確保できず、行政から運営を委託された施設を一時的に閉鎖せざるを得なかった
感染拡大防止のため、不特定多数の方の参加が見込まれるイベントの開催を断念した
Q : 1 設問の事例において、受託者であるNPO法人は、委託者に対してどのような義務を負っていますか。

受託者であるNPO法人は、委託者に対して、委託を受けた事業を契約どおりに実施する義務のほか、事業を契約どおり実施できなかったときは、帰責事由の有無や程度に応じて、委託者に生じた損害を賠償し、委託料を返還する義務を負っています。

これは民法に定められた取引における基本的なルールであり、取引の当事者はこのルールに従う必要があります。但し、取引の当事者は、民法のルールと異なるルールを契約で自由に定めることができます。当事者が定めた契約上のルールは、その内容が強行法規や公序良俗に反するといった例外的な場合を除いて、当事者間においては民法のルールに優先します。

 受託者が事業を契約どおり実施できない場合の措置については、通常であれば契約書に定めがあるので、まずは契約内容を確認してください。一般的には、不可抗力など受託者に帰責事由がないことが明らかな場合には、受託者が損害賠償義務まで負うことはありませんが、事業を実施できなかった以上、その対価である委託料の全部または一部を請求できないことが多いと考えられます。

 実務上問題になりやすいのは、受託者に帰責事由があるかどうかが直ちに判定できないケースです。設問の事例にある海外渡航が制限されたために現地調査などに赴くことができなかったというケースは、委託者がどう頑張っても事業実施は不可能ですので、受託者に帰責事由のないことが明らかです(現地スタッフでも調査が実施できたような場合を除きます。)。また、感染症対策で学校などが閉鎖された影響でスタッフが稼働できず、施設を一時的に閉鎖せざるを得なかったというケースでも、他のスタッフを手配して施設を継続できたような事情がない限りは、受託者の責任を問うことは難しいでしょう。

これに対して、感染拡大防止のために受託者の自主的な判断でイベントを中止したというケースでは、帰責事由の有無を簡単には判定できません。受託者の事情だけでなく、当時の感染の拡大状況、政府自治体の対応など、より詳しい当時の情勢を確認し、法的な評価を加えた上でなければ、受託者の判断が妥当であったかどうかは分かりません。

受託者の帰責事由の有無や程度をめぐって当事者間で見解の相違があり、協議によってもその溝が埋まらないときは、代理人による交渉や場合によっては裁判などの法的な対応が必要になります。受託者であるNPO法人としては、そうならないように、契約どおりの事業の実施が難しいことが予見できた時点で、委託者に協議を申し入れて、事業の内容や時期の変更について、話し合いを行うべきでしょう。

詳しくはQ2で述べますが、これらを変更することが出来た場合には、変更後のとおりに事業を実施すれば、債務不履行の責任は発生しません。

Q : 2 設問の事例において、受託者であるNPO法人は、委託者に対して、委託されている事業の内容や時期の変更を求めることはできますか。その場合、委託者に応じる義務はありますか。

契約で想定外の事態が生じたときに、契約当事者の一方が相手方に対して契約の変更を求めることはもちろん可能ですが、相手に変更に応じる義務があるかどうかは別問題です。

委託事業に関する契約書では、想定外の事態が起こったときは双方誠実に協議するといった規定が置かれていることが多く、協議義務は肯定される傾向にあります。しかし、当事者の意に反して変更に応じる義務まではないことがほとんどです。

協議によって契約変更の合意ができればよいですが、合意に達しない場合、受託者は当初契約のとおりに事業を実施しなければなりません。その結果、契約で定めたとおりの事業を行うことができないときは、受託者は契約違反の責任を問われる可能性があります。受託者の契約上の義務や受託者に帰責事由がない場合の責任については、Q1の回答をご参照ください。

Q : 3 設問の事例において、委託者から契約を解除されてしまった場合に、受託者であるNPO法人は、解除日までに行った業務の報酬や費用を委託者に請求できますか。

Q1の回答のとおり、設問の事例において委託者が一方的に契約を解除できるかどうかは契約内容や事案にもよりますが、事業を契約どおり実施できなかったことについて受託者に帰責事由が認められる場合には、解除が有効であることが多いでしょう。

これに対して、不可抗力など受託者に帰責事由がない場合にも契約を解除できるかどうかは契約次第です。

 解除が有効の場合の報酬と費用の精算についても、契約に定めがあればそれに従いますが、契約に定めがない場合は民法によります。

 民法が適用される場合、委託契約が仕事の完成を目的とする請負契約であるか、または受任者が一定の裁量のもとに委託者のために事務を処理することを目的とする準委任契約であるかによって、報酬や費用の取扱いが異なります。

受注した契約について何か仕事を完成させることが求められている場合、請負契約についてのルールが適用されます。この場合、契約が解除されると原則として報酬は支払われません。例外として、既に業務を完了した部分(出来高)を委託業務全体から分けることができ、その業務により仕事を依頼した者が利益を受けている場合には、その利益の割合に応じて報酬を請求できます。費用は、請負の報酬に含まれていると考えられており、別途支払いについて合意していない限り、請求することはできません。

これに対して、受注した契約について事務処理をすることが求められている場合、準委任についてのルールが適用されます。報酬については、既にした業務が全体の業務のなかで占める割合に応じて報酬を請求することができます。ただし、準委任であっても、令和2年4月1日以降締結された契約で成果物の引渡しが必要である場合には、上記の請負契約と同様に、既に業務を完了した部分が委託業務全体から分けることができ、その業務により仕事を依頼した者が利益を受けているときに、その利益の割合に応じて報酬を請求できることとされています。準委任契約における費用は、委託者の負担とされていますので、別途合意がない限り、委託者に請求することができます。

以上のように、契約が請負か準委任か、準委任の中でも成果物の引渡しを報酬の支払の条件とされているかによって、契約解除時における報酬請求の可否と費用負担についての結論は異なります。

なお、委託者からの契約解除が有効となる場面では、受託者の債務不履行によって委託者に損害が発生している場合があります。その場合、受託者は、委託者から請求があれば、帰責事由の範囲内で委託者に対して損害を賠償しなければならないことに注意が必要です。

 

雇用関係

Q : 1 事業者としてどのような新型コロナウイルス感染防止対策をとる必要がありますか。

従業員を雇用する事業者は、従業員の生命や身体の安全の確保に配慮することが必要とされています(安全配慮義務:労働契約法第5条)。また、事業者は、労働者の健康に配慮して労働者の従事する作業を適切に管理するように努めることを求められており、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する必要があります(労働安全衛生法65条の3)。

 そのため、事業者は、従業員が新型コロナウイルスに感染しないように、通勤、社内での就業、来訪者など外部者との接触、外出・出張などの場面に応じて、例えば、テレワークやフレックスタイム制の導入、職場環境の整備、不必要な会議を避ける、外出・出張の制限などの対策をとる必要があります。

 テレワーク導入に関する注意点については、別のQ&Aで説明していますので、ご参照ください。フレックスタイム制の導入については、厚生労働省のウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/content/000476042.pdf)をご参照ください。

上記の対策に加えて、実際に感染防止対策が功を奏するように、従業員を教育したり、通知を徹底したり、感染防止対策を使いやすい環境づくりを整えることが必要です。職場内での感染を防ぐためには、従業員の感染を早期に把握することも必要です。従業員に体調管理を徹底させ、体調がすぐれないときには出社しないことや、万が一従業員が感染した場合や濃厚接触者になった場合には、すぐに会社に報告するよう指導することも必要でしょう。

また、新型コロナウイルス感染予防だけでなく、従業員の精神面・健康面に配慮することも必要になります。例えば、感染者や濃厚接触者の差別や、いわゆる自粛警察のような行為によるいじめ、感染防止対策を徹底することにより、かえって熱中症など別の身体の危険が生じることのないように注意すべきです。特に、妊婦や重症化しやすい持病を持っている従業員については、特別な配慮が必要になるとともに、これらの者をサポートする一般の従業員への配慮も忘れてはなりません。従業員とコミュニケーションを密にとり、理解を得たうえで、その職場に合った最善の対策を講じていくことが肝要と思います。

新型コロナウイルスの実態は、徐々に解明されているものの、まだ完全に把握されておりません。そのため、必要(有効)な感染防止対策も日々変化しています。また、流行の度合いによっても、必要な対策は変化します。常に最新の情報に気を配り、必要に応じて対策を変えていかなければなりません。現在求められている対策については、下記のウェブサイトや各種報道を参考にするとよいでしょう。

もっとも、必ずしも、一般的に求められているすべての対策を講じなければならないということではなく、個々の事業者・職場の状況に応じて、必要かつ可能な範囲で対策すれば足りると思います。まずは、模様替えで、いわゆる三密を避ける席配置にするとか、ランチの時間に時差をつけるなど、資金のかからないところから始めてみるのも一案です。

 

<厚生労働省のウェブサイト>

・「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000633501.pdf

・新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html#Q1

・新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00018.html#Q2-1

・職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト(https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/000630736.pdf

 

<東京都のウェブサイト>

・新型コロナウイルス感染拡大防止のための 東京都における緊急事態措置等(https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/007/654/kinkyuujitaisochi.pdf

 

<経団連のウェブサイト>

・「新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」について

https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/040.html

・職場における新型コロナウイルス感染症への感染予防、健康管理の強化について(https://www.keidanren.or.jp/announce/2020/0515.html

 

Q : 2 従業員が新型コロナウイルスに感染した場合、自宅待機を求めることができますか。従業員が濃厚接触者になった場合や従業員の家族が濃厚接触者になった場合についてはどうですか。

新型コロナウイルス感染症は一律に就業が禁止される労働安全衛生法第68条の伝染病と定められてはおりません。

他方、新型コロナウイルス感染症は、感染症法上の指定感染症として定められています。しかし、指定感染症であっても、新型コロナウイルス感染症に罹患した者について、一律に就業が制限されるわけではありません。新型コロナウイルス感染症に罹患し、かつ、都道府県知事がまん延を防止するため必要があると認めた場合に初めて、特定の業務に限り就業が制限されることになります。また、無症状病原体保有者(いわゆる健康保菌者)及び新型コロナウイルス感染症が疑われる、似たような症状を呈する者(疑似症患者)についても、同様です。

事業者には、新型コロナウイルス感染症の感染者、無症状病原体保有者又は疑似症患者であって、都道府県知事により就業が制限された従業員については、出勤させず、自宅待機(休業)を求めることが要請されています。これが、使用者の責に帰すべき事由による休業であれば、使用者は、休業期間中、平均賃金の60%以上の手当を支払わなければなりません(労働基準法第26条)。しかし、都道府県知事による就業制限による休業は、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」には該当しないので、休業手当を支払う必要はありません。

 次に、都道府県知事による就業制限の対象とならない感染者又は疑似症患者(感染者等)であっても、症状により就業が困難な場合には、自宅待機を求めることができ、この場合にも休業手当の支払いは不要と考えます。

さらに、事業者は、従業員の生命や身体の安全の確保に配慮することが義務付けられています(労働契約法第5条、安全配慮義務)。都道府県知事による就業制限の対象とならない無症状病原体保有者若しくは感染者等であっても症状が軽く就業可能な者、又は濃厚接触者については、このような従業員が出勤することにより、他の従業員に感染する恐れがある場合には、事業者としては、安全配慮義務に基づき、これらの者に自宅待機を求める必要があります。この場合には、「使用者の責めに課すべき事由による休業」に該当し、平均賃金の60%以上の手当を支払う必要があります。

 また、従業員の家族が濃厚接触者になった場合も従業員が濃厚接触者である場合と同様に考えることになります。

 もっとも、単に、従業員やその家族が濃厚接触者になったという事実のみをもって、自宅待機を命ずるのでなく、職場環境や当該従業員の職種などを考慮して、他の従業員に感染する恐れがあるかどうかを判断するべきと考えます。

なお、新型コロナウィルスの実態は、まだ完全に把握されておりません。そのため、実態解明とともに、濃厚接触者の定義も変更されることがあります。現時点(2020年6月)での、濃厚接触者の定義については、下記ウェブサイトをご参照ください。

 

<国立感染症研究所のウェブサイト>

積極的疫学調査実施要領における濃厚接触者の定義変更等に関するQ&A(2020年4月22日)(https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9582-2019-ncov-02-qa.html

Q : 3 新型コロナウイルス感染症の影響で寄附金収入が途絶えたため事業を縮小しました。従業員に休業してもらって、賃金を払わないという取扱いは可能でしょうか。

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、使用者は、従業員に対して、休業期間中、平均賃金の60%以上の手当を支払わなければなりません(労働基準法第26条)。他方、不可抗力など、使用者の責に帰すべき事由ではない休業の場合は、賃金を支払う必要はありません(民法第536条第1項)。したがって、休業の理由が、「使用者の責に帰すべき事由による」か、「不可抗力による」かにより、賃金の支払い義務に違いがあります。

厚生労働省の令和2年6月16日時点版「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html)によれば、「不可抗力」とは、

  1. その原因が事業の外部より発生した事故であること
  2. 事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること

の2つの要件を満たすものでなければならないとされています(4労働者を休ませる場合の措置(休業手当、特別休暇など)の問1参照)。

例えば、定期的に寄付をしてくれていた企業が新型コロナウイルスの影響により業績が悪化し、次期の寄付を停止したことに伴い、NPO法人が事業を縮小し従業員を休業させる場合、これが不可抗力による休業と言えるかどうかについては、当該企業の寄附金への依存の程度、他の代替手段の可能性、事業縮小からの期間、休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、判断することになります。

このように、新型コロナウイルスの影響により、従業員に休業させると言っても、それが「使用者の責に帰すべき事由による」ものか、「不可抗力による」によるものかについて、明確な線引きはできません。従業員との間の紛争を回避するためにも、事業の縮小などにより従業員を休業させるときには、従業員とよく話し合って従業員の不利益を回避するように努力し、納得してもらうことが大切です。

なお、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成するための政府の制度として、「雇用調整助成金」があります。また、自治体によっては、独自の助成金や補助金を支給しているところもあります。休業回避のための具体的努力として、このような助成金制度をうまく活用しましょう。

 

<政府の雇用調整助成金>

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07_20200515.html

<伊勢崎市の例>

https://www.city.isesaki.lg.jp/sangyo/kensa/koyo/3914.html

<さいたま市の例>

https://www.city.saitama.jp/002/001/008/006/011/001/p072614.html

Q : 4 スタッフを在宅勤務(テレワーク)させる場合も労働時間を把握しなければならないのでしょうか。

労働基準法において、使用者は、原則として、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、時間外労働時間数、休日労働時間数、深夜労働時間数等を賃金台帳に記入しなければならないとされています。また、在宅勤務(テレワーク)の場合も、法定労働時間(週40時間制、1日8時間制)、法定の休憩時間の一斉付与・自由利用、週休制といった労働基準法の規定も適用されます。

そのため、使用者は、在宅勤務(テレワーク)の場合も、労働者の労働時間を適正に把握しなければなりません(厚生労働省「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」(https://www.mhlw.go.jp/content/000545678.pdf)でも、通常の労働時間制度に基づきテレワークを行う場合、労働者の労働時間について適正に把握する責務があるとされています。)。

もっとも、在宅勤務(テレワーク)の場合、「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事」することから、「労働時間を算定し難いとき」には、事業場外みなし労働時間制(労働基準法38条の2)が適用され、その労働者は原則として所定労働時間労働したものとみなされます。

「労働時間を算定し難いとき」について、上述のガイドラインは、①パソコンが使用者の指示で常時通信可能な状態となっていないこと、②作業が随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないことをいずれも満たす必要があるとしています。ただし、裁判所は、事業場外みなし労働時間制の適用の可否について厳しく判断する傾向があるため、まずは通常の労働時間制に基づく在宅勤務(テレワーク)を前提に、労働者の労働時間の把握に努めることが望ましいと考えます。

なお、事業場外みなし労働時間制が適用される場合であっても、長時間労働等によって労働者に健康被害が生じないようにするため、労働者の「労働時間の状況」を把握しなければならないとされています。

 

Q : 5 在宅勤務(テレワーク)のスタッフの労働時間を把握するため、具体的にどのような方法で把握すればよいでしょうか。

厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000149439.pdf)では、労働時間を適正に把握するための原則的な方法として、

① 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること

② タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること

のいずれかの方法によることとされています。

 在宅勤務(テレワーク)の場合、①の方法によることは難しいため、②の方法によることになると考えられます。もっとも、②の方法によるためには、在宅勤務(テレワーク)に対応した勤怠管理ツールを導入するといった検討が必要でしょうから、直ぐに在宅勤務(テレワーク)を導入したいNPO法人にとってはハードルが高いかもしれません。そこで、まずはスタッフからのメール等による自己申告によって労働時間を把握することもやむを得ない場合があると考えられます。その場合には、スタッフに適正に自己申告を行ってもらえるように、上述のガイドラインを参考にして、使用者として必要な措置を講じてください。

Q : 6 在宅勤務(テレワーク)のスタッフの労働時間を把握するにあたり気を付けるべき点があれば教えてください。

在宅勤務(テレワーク)の場合、労働者が使用者から離れた場所で勤務するため、相対的に使用者による管理の程度が弱くなります。それに伴い、事業場外みなし労働時間制の適用などがない場合、労働者の労働時間を把握するにあたって次のような点に留意する必要があります(以下について、厚生労働省「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」(https://www.mhlw.go.jp/content/000545678.pdf)参照)。

⑴ いわゆる中抜け時間

一定程度労働者が私用のために業務から離れる時間(いわゆる中抜け時間)の取扱いについてです。

この点については、①休憩時間として取扱う方法(その時間分については始業時刻を繰り上げる又は終業時刻を繰り下げる)、②時間単位の年次有給休暇として取扱う方法が考えられます。

①については、休憩時間の一斉付与の例外となるため、労使協定の締結が必要となります(労働基準法34条2項)。また、中抜け時間分について始業時刻又は終業時刻を変更する場合には、その旨を就業規則に定める必要があります(同法89条1号)。

また、②についても、時間単位の年次有給休暇を与えるためには、労使協定の締結が必要となりますし(同法39条4項)、「休暇」に関する事項として就業規則に定める必要があります(同法89条1号)。

 ⑵ 在宅勤務(テレワーク)中の就業場所間の移動時間

勤務時間の一部で在宅勤務(テレワーク)を行う際の就業場所間の移動時間の取扱いについてです。

就業場所間の移動時間が労働時間に該当するか否かは、使用者の指揮命令下に置かれている時間か否かによって判断されると考えられます。具体的には、①使用者が就業場所間の移動を命じているか否か、②移動時間中の自由利用が保障されているか否かによって判断されます。

例えば、使用者から就業場所間の移動を命じられず、労働者の都合による移動であって、移動時間中の自由利用も保障されている場合には休憩時間等として取り扱うことが考えられます。休憩時間等として取扱う場合の留意点については、上述した「⑴ いわゆる中抜け時間」の記載を参考にしてください。

Q : 7 在宅勤務(テレワーク)中のスタッフの秘密保持や情報管理については、どのような対応が必要になりますか。

在宅勤務(テレワーク)では、労働者が情報通信技術(ICT)を活用して、また、書類を持ち出して、法人が取り扱う情報を在宅で利用することになります。

法人が取り扱う情報(会員情報、寄付者情報など)の中には、個人情報、プライバシー、営業秘密、契約に基づき秘密保持義務を負う情報等の重要な情報が含まれています。

そのため、情報管理の観点からは、在宅勤務(テレワーク)の対象業務がどのような情報を取り扱っているか、その情報についてセキュリティ対策がとられているか等に留意して情報管理のルールを定める必要があります。

情報セキュリティ対策は、人為的なセキュリティの確保と技術的なセキュリティの確保の両面から考える必要があります(厚生労働省「テレワーク導入のための労務管理等Q&A集」(http://www.tw-sodan.jp/dl_pdf/13.pdf)参照)。

人為的なセキュリティを確保するためには、利用端末の管理、法人外ネットワークへのアクセス方法、書類の持ち出しルール、電子データの印刷ルール等の情報管理のルールを策定するとともに、労働者がそのルールを遵守するように教育する必要があります。

このような人為的なセキュリティでも対応できない部分に関しては、技術的なセキュリティによる補完を検討する必要があります。技術的なセキュリティ対策としては、利用端末へのログイン認証の強化、ウイルス対策ソフトのインストール・アップデート、クラウドを利用する場合にはクラウドアクセス時の端末認証の強化等が考えられます。

情報管理のルールの策定にあたっては、総務省「テレワークセキュリティガイドライン(第4版)」(http://www.soumu.go.jp/main_content/000545372.pdf)や経済産業省「テレワーク時における秘密情報管理のポイント」(https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/teleworkqa_20200507.pdf)が参考になります。

なお、在宅勤務(テレワーク)で労働者が私物のパソコン等の情報通信機器を利用する場合には、技術的なセキュリティが確保されているかを事前に確認するのが望ましいです。そのため、法人の事前の許可を受けなければならないことを就業規則等に定めておくといった対応が考えられます(厚生労働省「テレワークモデル就業規則~作成の手引~」(http://www.tw-sodan.jp/dl_pdf/16.pdf)参照)。

Q : 8 在宅勤務(テレワーク)に関する規程を作成したいのですが、どのような点に気を付ければよいでしょうか。参考になる雛形などがあれば教えてください。

在宅勤務(テレワーク)に関する規程を作成するにあたって、在宅勤務(テレワーク)の対象となる労働者の労働条件を変更する必要がある場合、①就業規則の変更と②労働者の同意が問題となります。

まず、①について、就業規則には必ず記載しなければならない労働条件(必要記載事項)があり(労働基準法89条)、これを変更する場合には、就業規則を変更しなければなりません。もっとも、それ以外の労働条件を変更する場合であっても、労務管理上、就業規則を変更するのが望ましいと考えられます。

就業規則を変更する場合、在宅勤務(テレワーク)に関する労働条件を就業規則本体に定めても、新たに「テレワーク勤務規程(在宅勤務規程)」を作成しても構いません。

新たに「テレワーク勤務規程(在宅勤務規程)」を作成する場合には、就業規則本体に「従業員のテレワーク勤務に関する事項については、この規則に定めるもののほか別に定めるところによる。」などの委任規定を設けることになります。

在宅勤務(テレワーク)に関する規程を作成するにあたっては、厚生労働省「テレワークモデル就業規則~作成の手引~」(http://www.tw-sodan.jp/dl_pdf/16.pdf)や、一般財団法人非営利組織評価センター(非営利組織のガバナンスの第三者評価を行う団体)のウェブサイトで公開されている「テレワーク勤務規程のサンプル」(https://jcne.or.jp/2020/04/30/teleworkrules/)が参考になります。

次に、②について、在宅勤務(テレワーク)の対象となる労働者の労働条件の変更がその労働者にとって不利益であれば、原則としてその労働者の同意を得る必要があります(労働契約法9条)。

もっとも、「変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき」は、就業規則の変更によって労働条件を変更することもできるとされています(同法10条)。

労働条件の変更が労働者にとって不利益であるか否かは必ずしも明確ではないため、在宅勤務(テレワーク)の対象となる労働者の労働条件を変更する場合には、その労働者に対して就業規則の変更の合理性を個別に説明(周知)し、その労働者の理解を得て同意してもらうのが望ましいと考えられます。